| とある小学校2年生の教室。給食の時間がやってきました。お腹をすかせた子どもたちはわーわーと騒ぎながら給食をたいらげていきます。子どもたちにとって給食は楽しい時間のひとつです。
そんな中、Mちゃんは身動き一つしません。じっと一点を見つめたままの大きな目には涙がたまっています。口は堅くつむったままです。担任の先生がやさしく話しかけながらスプーンで人さじずつおかずを口に運びます。Mちゃんは少しだけ口を開き、ほんの一口飲み込みます。すべてのおかずを一口ずつ食べ、やっと長い長い給食に時間が終わります。
これは私が大学時代の小学校実習で実際にあったお話です。Mちゃんはよくしゃべる、とっても明るい普通の女の子です。普段のMちゃんからは給食の時の様子は想像もつきません。どうして給食になると、このようになってしまうのでしょう? 担任の先生によると、小学校の給食を心配した母親がMちゃんが小学校に上がる前に何とか偏食を減らそうと毎日必死に「給食で困るよ」と脅したり、叱ったり、諭したりしたそうです。Mちゃんにとってそれが心の傷になり、給食になると動くことも食べることもできなくなるようになってしまったようです。

体の成長に個人差があるように、味覚の成長にも個人差があります。子どもは噛んで飲み込むという機能の発達と新しい味覚の学習(経験)により、食べるものを徐々に増やしながら成長していきます。皆さんも子どものころ嫌いだったものがいつの間にか食べられるようになっていたという経験があると思います。食べられるようになる時期は食べ物によって、また子どもによってまちまちです。(図)
食べられないからと言って叱らないでください。偏食が強いと親としては心配だと思います。けれど、嫌いなものは無理にすすめても決して好きにはなりません。無理強いは心の傷を作り、後々好きになるかもしれない機会を奪ってしまいかねません。
お子さんがなぜそれを苦手とするのか、お子さんに聞いてみてください。そして、食べているところを観察してみてください。いつまでも口にためてもぐもぐしたまま飲み込めないとか、あまり経験したことのない味であるとか、外観が気持ち悪いとかいろいろと原因が見つかってくると思います。
もし、噛めない、飲み込めないことが原因であれば、食べる機能の成長がまだ追いついてないのかもしれません。少し大きくなるまで待ってみてもいいと思います。また、小さく切ったり、やわらかく煮たり、食べやすく調理を工夫するのも有効なやり方です。
また、嫌いなものでも作る過程を体験することにより、好きになることがあります。お子さんと一緒に料理してみてください。毎日食べているものが手間と愛情かけて作られたものと知ることで「食べること」を大切に考えるきっかけになると思います。
もちろん、それで食べられるようになるとは限りません。すぐに食べられるようになる方がまれかもしれません。それでも食べられない場合は気長に見守りましょう。大人でも食べられないものがいくつかあるはずです。(私はお漬物と納豆が苦手です)。あまりに多い偏食は困りますが、ひとつふたつ食べられなかったからといって、栄養に困ることはありません。時々様子を見て食べる機会を与えつつ、じっくりゆっくりいきましょう。
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味覚というのは学習していくものです。毎日の食卓が学習の場です。多彩な食材、メリハリある調理法でいろんな味に触れさせてあげてください。そして食べる楽しみを教えてあげてください。
お母さんの料理は子どもにとってはかけがえのない心と舌の財産となっていくはずです。
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